とりとめもなく、だらだらぬるぬる書き留めるらしいです。

テレビ版「永遠の0」

映画「永遠の0」を見に行ったのは、たしか2014年1月1日だった覚えがあります。
当初「ゼロ・グラヴィティ」を見るか、という話になっていたのですが、直前になって「永遠の0」の評判が良いらしいぞ、という意見に傾き、急遽ターゲット変更。

結果としては、変更は正解だったと思っています。
史実として見た場合、突っ込みどころは満載なんだと思いますが、ゼロ戦と特攻隊員のフィクションだと思えば、単純な感動作として鑑賞できました。
(Blu-rayは買ってしまいました。かなり久々のサラウンドシステム稼働・・・)

そして、何を考えたかテレビ東京がこの永遠の0をドラマ化。

かなり気合を入れて宣伝していたようですが、視聴率的には3夜とも10%未満、決して褒められた結果ではなかった模様。
原因としては、話そのものの出来よりも、
・「水曜祝日」⇒「土曜」⇒「日曜」という変則放送日程
・原作者の様々な問題発言(行動?)
・2時間x3夜、総6時間という長編ドラマ
こういった点が、見なかった人や録画で済ませた人を多数生んでしまったかな、と。
夏休みの終戦記念特番として、8/14-15日の2夜連続で放送すれば、きっと視聴率15%はカタい(ほんとか?)

かくいう自分も、ドラマ版はリアルタイムでは見る気がせず、全部録画。
先々週~この土日で、ようやく全部見ることができました。
(実は、私は原作はまだ読んでいません。汗)

テレビ東京公式サイト
Wikipedia

回想パートの主演・宮部久蔵には向井理さん、松乃役に多部未華子さん、現代パートでは、佐伯健太郎役として桐谷健太さんと姐・慶子役に広末涼子さん、そしてキーマンとなる祖父・大石賢一郎は伊藤四朗さんが演じています。

まず、ドラマのストーリーとしては、映画で省略および統合されたシーンがいくつ描かれました。
たとえば、
(1)佐伯慶子の恋愛話
(2)元特攻隊員である社長と新聞記者との論戦
(3)ヤクザの囲い者にされた松乃を景浦が救う
このあたりは、映画ではほとんど話が出ませんでした。
(1)については、まるっとカット。
(2)は、健太郎が合コンに誘われ、そこで他の友人から「特攻は自爆テロと同じ」と主張されブチ切れて席を蹴る、というシーンに変更。
(3)は、現代の大石が、亡くなった松乃に語りかけるようにヤクザに松乃が救われた過去を思い出し、「あれは、誰だったんだろうなぁ・・・」とつぶやくのみとなっています。

正直、(1)についてはドラマ版でも不要だったかな、と。
これ削って、2夜ドラマにしたほうがよかったかも。

(2)は、映画版において朝日新聞社に出資して、無理やりこのシーンを合コンに変更した(らしい)ことを考えると、非常に素晴らしい点でした。
宮部の話を聞きたいと、ある企業の社長・武田へのインタビューに向かった佐伯姐弟に同行し、「国民すべてが、戦争を賛美するように軍部に洗脳されていた。特攻隊員は洗脳されたテロリストと同じ類だ」と主張する(おそらく朝日新聞をイメージした)東都新聞記者・高山に対し、「その洗脳の先鋒となったのは、散々戦争を賛美しておきながら、戦後反省もなく手のひらを返すように主張を変えたお前らマスコミだ!」と断じた武田社長。
ドラマ「リーダーズ」で、香川さん演じる日銀名古屋支店長・山梨が、アイチ自動車への出資を渋る西国銀行の児島を一喝し、議場から叩き出したシーン以来の感動を受けました。

(3)は、原作を読んでいない自分としては、景浦は自ら松乃を救いに行ったとばかり思っていたのですが、実はカチ込みした先で、囲い者の松乃も叩き斬ろうとした瞬間に、宮部が持っていた写真に写っていた女性であることに気づき、ポケットにあったカネを松乃に投げつけて「逃げろ・・・」とだけ伝え立ち去る、という偶然の産物だと知ってびっくり。

統合されたシーンとしては、井崎および景浦などへのインタビューシーンに、他のインタビュー内容が混ぜ込まれているのが映画版。
例として、宮部が大石とゼロ戦を乗り換えたことを語るのは、ドラマでは竜雷太さん演じる通信兵・村田でしたが、映画では景浦のシーンに統合されています。
たくさんの人の話を聞きながら、徐々に核心に迫っていくという点では、ドラマ版は丁寧に描かれていますが、逆に映画版は、うまいことこのあたりを統合して短くしたなぁ、という感想も併せて持ちました。

配役としては、映画版主演の岡田さんが見事な演技を披露したこともあって、向井さんではどうなんだろうなぁ?と疑問符を付けていましたが、実際に見てみると、なかなか気迫のこもった演技をされていました。
ただ惜しむらくは、彼は顔がキレイすぎる。
多数の若者を、死ぬために送り出すのを見てきて精神を病んでしまった宮部を演じていた岡田さんの、うつろな目・血の気の引いた顔色・そして無精ひげは、地下牢に閉じ込められ半死状態に陥った軍師・官兵衛のときと同様、鬼気迫るものがありました。
が、向井さんはヒゲもほとんど生えない、つるっとした健康そうないつものイケメン顔。
もう少し何とかならなかったかな~、メイクさん?と言いたかった。
(関係ないですが、向井さんの出るCMばかり流れていて、雰囲気ぶち壊しという話も。)

多部ちゃんは、かわいいから許すw
個人的には、井上真央よりよかった。
でも、宮部がたまたま帰宅し、清子が風呂で粗相をして大騒ぎするシーンは欲しかったなぁ。
(あれは映画オリジナルシーンか?)

芸人枠として、TKO木下さん・千原せいじさん・ハライチ澤部さん・原田泰造さんなどが出演。
お笑いのイメージがあるので、難しい顔をした木下さんが宮部を説教しても、なんとなく笑ってしまうのですが、演技はどの芸人も悪くなかったと思います。

今年は戦後70年ということで、当時20歳だった人も90歳となります。
そう考えたとき、現代/回想両シーンに登場するキャラを演じる人は、総じて若すぎるイメージがありますが(伊藤四朗さんは77歳ですが、とてもお若く見える・・・。柄本さんや笹野さんなんてまだ66歳)、舞台は戦後60周年である2005年なので、80歳だと思えば、違和感を薄めることもできなくもない。

ゼロ戦のシーンについては、これはもう予算が違うので映画版と比較はできません。
ドラマ版はよく頑張ってあれだけのシーンを作ったというべきでしょう。
欲を言えば、過去シーンはもう少し画面の色をセピアっぽくしたほうがよかった。
地デジで映像がキレイになってしまったので、色々つくりが安っぽく見えてしまいます。
セピアかつノイズでも載せておけば、アラも隠せたんじゃないかな。

ラスト、映画では賛否両論あった2つのシーン。
(1)突如、健太郎の目前に現れる宮部とゼロ戦
(2)雨あられのような艦砲射撃をかいくぐり、突撃する宮部機(爆発シーンなし)

まず(1)は、ドラマではオミットされました。
原作重視、ということだと思います。
また、あのシーンは不要だという意見も、ネットで多数見かけました。
しかしながら、あそこまでの流れですでに涙ボロボロになっていたとしたら、現代の空を飛び、健太郎に敬礼する宮部の姿にトドメを刺された人も多かったでしょう。

(2)は、特攻直前でブラックアウトする映画版に対し、ドラマは甲板に激突・爆発するシーンまで描きます。
映画版では、空母にいるアメリカ軍兵士が、宮部機に艦砲が当たらないことを嘆くセリフがあります。
「ヤツはマジック・ヒューズの仕組みを知っているのか!?」
また、景浦が模擬戦闘で背後から宮部を狙った際、撃った弾全てがことごとく外れたことを説明するシーンがありましたが、ドラマ版ではカットされていました。(撃った弾が全て左に流れていく映像はあったので、想像はできます。)
ゼロ戦を手足のごとく操る天性の才能に加え、心理・錯覚・敵の武器の仕組みの死角などの知識全てを駆使して、ほぼ不可能な空母への特攻を成功させた宮部、というイメージを膨らませる点で、映画の演出はお気に入りです。

最後の突撃するシーンでの宮部の表情は、評価は分かれそうです。
あくまでも冷静に、そして最後に不敵に笑う映画版に対し、必死な表情を浮かべるドラマ版。
私としては映画版を推したいところですが、ほぼ弾があたらずに特攻した映画版に対して、すでに機体後部へ被弾していたドラマ版、必死に手負いの機体を操る表情としては、ドラマ版のほうが正解かもしれませんね。

テーマ曲は、映画版がサザンオールスターズ、テレビ版はMISIAでした。
サザンは、年末のゴタゴタでイメージを悪くしたのもあって、MISIAのほうがよかったw

長くなりましたが、ドラマ版「永遠の0」は、骨太で見応えのあるドラマと感じました。
原作派、映画派、どちらも楽しめる内容だと思います。
ただ、かなり長丁場になるため、時間の取れるときにゆっくりと見たほうがよいでしょう(笑)


トラックバック・ピンバックはありません

ご自分のサイトからトラックバックを送ることができます。

Leave a Reply

*